米雇用まさかの2.3万人減、S&P500最高値 — マーケットブリーフィング 2026-08-10(月)

マーケットブリーフィング米雇用統計半導体地政学リスク

⚠️ 持ち越し注意

今週の最大の関門は 8/12(水)21:30の米7月消費者物価指数(CPI) です。

先週末の株高は「雇用が弱いのでFRBは利上げできない」という読みに支えられています。ここでインフレが下がらなければ、「雇用は弱いのに物価は高い」という最も厄介な組み合わせになり、前提そのものが崩れます。

8/11(火)は山の日で東京市場は休場です。米国は通常取引なので、火曜の米国市場の結果は水曜の朝にまとめて織り込むことになります。週後半はお盆で参加者が細り、8/14(金)はオプションSQ算出日にあたります。

なお、ジャクソンホール会議は8/27(木)-29(土)の開催で、テーマは「金融イノベーション:決済と政策への影響」と報じられています(講演者・議長講演の日時は未確認)。

センチメント

CNN Fear & Greed は 64(Greed)、日経平均ボラティリティー・インデックス(日経VI)の8/7(金)終値は29.88、米VIXは14.90でした。

日経VIは30割れが2営業日連続です。恐怖側のシグナル(F&G 25未満・日経VI 30超)はどれも点灯しておらず、買い場の兆候は出ていません

むしろ注意すべきは逆の側面です。警戒感が緩んだ状態で大幅なギャップアップを迎えるため、上値では利益確定が出やすい地合いといえます。

主要ニュース

① 米7月雇用統計が予想外の「減少」

非農業部門雇用者数は前月比2.3万人の減少で、市場予想の8.0万人増を10万人以上下回りました。失業率は4.1%(予想4.2%)と改善した一方、平均時給は前月比+0.1%と昨年12月以来の低い伸び。5月は12.9万人増→6.3万人増、6月は5.7万人増→2.0万人増へ大幅に下方修正されています。

9月の米利上げ確率は発表前の55%程度から40%程度へ低下しました。

★ 悪材料が好材料として買われた形です。ただしこの解釈が成立するのはインフレが落ち着いている間だけで、8/12(水)のCPIが試金石になります。

② イランがホルムズ海峡の通航再開の条件を提示

8/8(土)、イランの最高安全保障委員会が、米国による海上封鎖の解除と武力行使による被害の補償を通航再開の条件として示しました。ロイターは米政府当局者の「近いうちに合意が成立するとみている」との見方を伝えています。

一方でオマーンによる確認も署名済み文書も存在せず、海峡の脅威度は高いままです。8/4-5には海峡・紅海・アデン湾で3件の攻撃関連事案(うち1隻沈没)が報告されました。

★ 原油にとっては下押し方向のヘッドラインです。週末に前提が変わったまま東京が開く点に注意が要ります。

③ ヘッジファンドのAI関連ファンド救済報道

米大手ヘッジファンドのシタデルが、AI特化型ファンドの救済に乗り出したと報じられました。安心感が広がるという見方の一方で、同様の懸念を抱えるファンドが他にないのかという疑心暗鬼も残ります。

★ AI関連のレバレッジ巻き戻しリスクとして、中期で追跡する価値のある材料です。

米国市場(8/7(金))

指標終値前日比
ダウ工業株30種54,036.93+151.83(+0.28%)
S&P5007,757.64+47.68(+0.62%)・最高値更新
ナスダック総合26,690.62+342.27(+1.29%)
SOX(半導体)12,356.78+308.09(+2.56%)
VIX14.90-0.25(-1.65%)

ダウが+0.28%にとどまったのに対し、ナスダックは+1.29%、SOXは+2.56%。この差が示すのは、下がったのが金利で、恩恵を受けたのがデュレーションの長いグロースだということです。

米国債は10年債4.65%(-0.04)、2年債4.20%(-0.06)と全年限で低下しました。金先物は+2.33%の4,399.70ドルと約2カ月ぶりの高値をつけ、週間では+7.13%。利上げ観測の後退と実質金利の低下を同時に織り込んだ動きです。

WTI原油9月限は78.18ドル(+1.15%)で続伸し、78ドルを終値で維持しました。ただしこれは前述のイラン報道が出る前の値です。

週間(8/3-8/7)ではS&P500が+3.6%、ナスダックが+5.2%と4月以来の大幅高。S&P11業種のうち8業種が上昇し、首位は情報技術の+7.2%、最下位はエネルギーの-3.4%でした。

日経平均先物はシカゴ9月限が66,315円で、大阪取引所の終値比+655円。東京は約700円のギャップアップで始まる公算です。

※S&P11業種の8/7単日の全順位は執筆時点で未配信、韓国KOSPIとSKハイニックス・サムスン電子の8/7終値は取得不可でした。

為替

ドル円はニューヨーク17時時点で157円80-90銭。前日同時刻の158円42-52銭から62銭の円高です。雇用統計の直後には一時156円68銭まで急伸しました。

200日移動平均の158.06円を再び下回ったことで、8月前半の追い風だった円安は一旦後退した形になります。ユーロ円は182円40-50銭でした。

先週1週間を振り返ると、日米協調介入の後は「急落 → 反発 → 介入警戒による上値抑制」の三段階でした。介入は円の急落を抑えましたが、トレンド転換には至らなかったというのが結論です。

前日の日本市場(8/7(金))

日経平均は**65,606.71円(-76.55/-0.12%)**と小幅続落。一時は64,768.25円まで915円下げましたが、後場に840円戻しました。TOPIXは4,074.93(+0.47%)で4日続伸し、日経とTOPIXの符号割れは2営業日連続です。

プライムの売買代金は10兆8,960億円、値上がり939・値下がり582で4営業日連続の値上がり優勢。33業種は石油・石炭製品(+4.24%)が首位で、建設業(-1.48%)が最下位でした。

資金フロー ― 週間で見ると答えが変わる

★ 月曜は東証33業種の「週間」騰落を見る日です。ここに今週最大の読みがあります。

7/31(金)終値からの1週間で、東証33業種は値上がり23・値下がり10。首位は非鉄金属の+10.71%(上昇率上位にフジクラ・三菱マテリアル・古河電工)、2位は繊維製品の+9.33%、3位その他製品+5.46%、4位鉄鋼+4.26%でした。一方で**鉱業は-2.97%**と下落側です。

これを米国の週間セクター順位と並べると、構図がはっきりします。米国は情報技術+7.2%が首位でエネルギー-3.4%が最下位、日本は非鉄金属+10.71%が首位で鉱業が下落側。日米ともに「エネルギーから抜けてAI実弾・素材へ」で一致しています。

★ つまり8/7(金)単日に石油・石炭製品が33業種1位になったのは、週間トレンドに逆行した1日だったと読めます。

日米が同じテーマを別の入れ物で買っている点も重要です。米国は半導体とソフトウェア、日本は電線・光部品・銅。AIデータセンター向けの実需という点で中身は同じものです。

本日新しく効く力は「金利低下」でしょう。米10年債4.65%・2年債4.20%への低下は、成長株のバリュエーションを直接押し上げます。

逆に弱くなるのは円安valueです。8/7の東京では158円台の円安にもかかわらず輸送用機器は33業種21位にとどまりました。円安がドライバーとして機能していないところに、その円安自体が剥がれた——輸出関連は追い風を二重に失った状態です。

過去の類似局面

雇用の急減速を株が「利上げ回避」として買う局面です。

思い出されるのは2024年8月5日の暴落です。7月雇用統計の下振れでサーム・ルールが発動し、日経平均は史上最大の下げ幅となる4,451円安(-12.4%)を記録しました。当時は雇用の弱さが「景気後退」と読まれたのです。

★ 今回が逆の反応になっているのは、金融政策の方向が違うからです。2024年はFRBが利下げ局面の入口にいましたが、現在は利上げ局面の途中。雇用の弱さが「利上げを止める理由」として働きます。

より近い先例は2026年7月2日発表の6月分で、5.7万人増と予想を大きく下回り株高・円高で反応しました。今回も同じ組み合わせで、2回連続の同型です。

なお、過去の事例は将来を保証するものではありません。バリュエーションや原油水準といった初期条件は毎回異なります。

前日の仮説と検証

先週金曜に立てた仮説を、米国市場の結果を織り込んで確定判定します。◎2・✗2・順行1・保留1でした。

[0807-5] ◎的中 ― 「米雇用統計の"実績の期待からのズレに対する反応"を見る。コンセンサスは8万人増、サプライズ閾値は±3万人。11万人超なら159円台へ、5万人未満なら158円割れ」。実際はNFPが2.3万人減で予想を10.3万人下回り、ドル円は156円68銭まで急落してNY17時は157円80-90銭。158円割れの側が実現しました。イベント前は「利上げをほぼ確実視」する側にポジションが傾いていたため、下振れ時の巻き戻しの値幅が出るという読みがそのまま機能しました。

[0807-3] ◎的中 ― 「ドル円158円台の円安でも、輸送用機器は33業種の上昇率上位5に入らない」。実際は+0.19%で21位。上位5は石油石炭・その他製品・ゴム・非鉄・海運でした。円安が輸出株のドライバーとして機能していないことを確認できた1件です。

[0807-1] ✗外れ ― 「INPEXは当日決算のためセクター連動から外れ、鉱業をアンダーパフォームする」。実際はINPEX +1.13%に対し鉱業+0.61%で、+0.52ポイント上回りました。原因は想定外の新材料で、INPEXが上方修正に加えて年間配当を54円→108円へ倍増したためです。自分で書いた無効化条件がそのまま起きた形でした。

[0807-2] ✗外れ ― 「レーザーテックは寄り付きで下にギャップした後、寄り値→引け値ではプラスで終える」。実際は寄り値40,000円→引け値37,460円で6.35%の下落。会社予想900億円に対し市場予想968億円という7%の未達は、寄り付き1回では織り込みきれませんでした。

[0807-6] 順行 ― 中期の4条件のうち3つが成立。値上がり優勢は4営業日連続、符号割れは2営業日連続、そして**日経VIの30割れは2営業日連続(終値29.88)**を達成しました。13週線66,032円の回復だけが未達です。

[0807-4] 判定保留 ― 車載/産業マイコンの在庫調整完了が日本の部材メーカーの受注に出るかを見る中期仮説で、中間確認は8/21(金)前後です。

注目銘柄5

母集団は8/7(金)のプライム売買代金上位100で目立った動きをした銘柄です。非鉄金属2・電気機器2・鉱業1の構成としました。

🔼 フジクラ(5803) ― 短期 追い風(中)/中期 追い風(強)

8/7の14時に今期2度目の上方修正を発表しました。27年3月期の連結経常利益を3,160億円から**4,530億円(+43.4%)**へ引き上げ。理由は当初計画で想定していなかったハイパースケーラーからの光コンポーネント受注と売価アップ、そして懸念された水素不足影響の緩和です。思惑ではなく受注と価格という実弾で、効く時間軸は数四半期。株価は+12.82%の5,185円、出来高は1億2,868万株に達しました。

効く時間軸は数四半期。同業の古河電工との違いは確度です。古河電工も8/6にデータセンター需要で予想を引き上げましたが8/7は売られました。フジクラは増益率が大きく、しかも「2度目」である分、会社側の見通しの確からしさが一段高いといえます。同じ需要でも業績のブレ幅に強く振れるのはフジクラの側です。

決算は8/7に通過済み(次回は11月頃・日程未確認)。8/14(金)のSQで需給が荒れやすい点と、ギャップアップ翌日の利益確定がリスクです。8/7の高値5,280円・安値4,380円という900円幅が当面の参照帯になります(目標株価は取得不可)。

🔽 三菱マテリアル(5711) ― 短期 逆風(中)/中期 追い風(弱・要点検)

金属価格の上昇と円安による在庫評価益が2本柱ですが、本日はこのうち円安が剥落しました(158.42→157.80円)。一方で金は+2.33%で2カ月ぶり高値、週間+7.13%と金属価格側の追い風はむしろ強まっており、追い風と逆風が入れ替わった状態です。8/7は寄らずのストップ高(+15.71%・5,157円)で需給が極端に偏りました。

同業の住友金属鉱山との違いは為替と金への感応度配分です。住友鉱は金鉱山を保有し金価格の追い風がより直接的、三菱マテリアルは円安・在庫評価の追い風が大きい。したがって円高局面では住友鉱の方が耐性があるという関係になります。効く時間軸は短期が数日、中期が数四半期。

決算日は未確認です。同業の住友金属鉱山が本日8/10に決算を発表し、その内容がセクター全体の需給に波及しうる点がリスク。ストップ高の翌日は値幅が跳ねやすく、寄り気配の水準を引けまで維持できるかが焦点です(目標株価は取得不可)。

🔽 レーザーテック(6920) ― 短期 逆風(中)/中期 追い風(弱・要点検)

EUVマスク欠陥検査装置を実質独占していますが、FY27/6の会社予想営業利益900億円が市場予想968億円を約7%下回り、成長率の水準に疑問符がつきました。8/7は-13.55%の37,460円。寄り値40,000円から一度も戻さず、安値37,040円のすぐ上で引けています。40,000円近辺に戻り売りの待機玉が厚いとみられます。

同業のアドバンテストとの違いは、セクターの追い風の受け取り方です。アドテストはAIメモリの生産量に直結し金利低下によるグロース評価の回復をそのまま受け取れますが、レーザーテックは決算で数字を否定された直後。金利主導の反発局面ではアドテストの方が素直に振れます。時間軸は短期が数日、中期が数四半期。

本決算は8/6に通過済み。8/13(木)のアプライドマテリアルズ決算が半導体装置の需要観測に直結します。2営業日で43,330円→37,460円と13.6%下げており、直近安値37,040円が下値の第一メド。割れたら次のメドを引き直します(目標株価は取得不可)。

🔽 INPEX(1605) ― 短期 逆風(中)/中期 追い風(弱・要点検)

8/7に26年12月期を上方修正し年間配当を54円→108円へ倍増しましたが、株価は+1.13%の3,499円にとどまりました。材料の大きさに対して伸びが小さいのが気になります。ここに週末のイラン報道が重なりました。WTIの終値78.18ドルは合意接近の報道が出る前の値です。

資金フローの位置づけが本日の核心です。米エネルギーは週間-3.4%で11業種最下位、日本の鉱業も週間-2.97%。週間で見れば資金はエネルギーから抜けています。時間軸は短期が数日、中期が数カ月。同業の石油資源開発との違いはLNG比重で、INPEXはイクシスLNGの比重が大きく価格変動を平準化しやすいため、急落局面では下値が浅く急騰局面では出遅れます。今回のような剥落局面ではINPEXが相対的に強いと読みます。

決算は8/7に通過済み。中東ヘッドラインが日替わりで方向を変えるのが最大のリスクです。地政学プレミアムが剥落する局面ではプレミアムを織り込んだ目標株価は引き下げ方向に働くため、上値余地は過大に見積もらない構えとします(目標株価は取得不可)。

🔼 アドバンテスト(6857) ― 短期 追い風(中)/中期 追い風(弱・要点検)

注目理由は日本側固有の需給です。8/6・8/7の2営業日で日経平均の押し下げ寄与1位を張り、8/7は1銘柄で約381円押し下げました。SOXが反発した翌日に-2.25%と逆行したのもこの銘柄が中心で、同じ半導体でも東京では真っ先に売られた側にいます。つまり「出遅れ」ではなく「売られ過ぎ」から入る構図です。

加えて8/14(金)のオプションSQを控え、指数寄与度の高い銘柄には先物・オプション絡みの需給が入りやすくなります。HBM/AIテスターはAIチップの生産量に直結するため、AI設備投資の実弾化の最終工程に位置します。時間軸は短期が数日、中期が数四半期。

同業の東京エレクトロンとの違いは反応速度です。東エレクは前工程装置で設備投資サイクルに依存し数四半期遅れて効きますが、アドテストは生産量に直結するため反応が速い。8/7も東エレク-1.50%に対しアドテスト-2.25%と振れ幅が大きく、下方向でも感応度が高いことが確認できます。

決算日は未確認。8/13(木)のアプライドマテリアルズ決算とSQがイベントリスクです。AI関連のレバレッジ巻き戻しリスクは、この銘柄に最も強く当たる点にも留意が必要でしょう。8/7終値は32,190円、始値32,910円が当面の上値の参照点です(目標株価は取得不可)。

本日・今週の注目イベント(日本時間)

  • 8/10(月) 8:50 日銀7月会合「主な意見」/10:30 中国7月CPI・PPI/14:00 7月景気ウォッチャー調査/決算=住友金属鉱山・サンリオ
  • 8/11(火) ⚠️ 山の日で東京市場は休場(米国は通常取引)
  • 8/12(水) ⚠️ 21:30 米7月消費者物価指数(CPI)/7月マネーストック/決算=東京海上HD・TOPPAN HD、米シスコシステムズ
  • 8/13(木) 米7月生産者物価指数(PPI)/7月国内企業物価指数/決算=三越伊勢丹HD・カネカ、米アプライドマテリアルズ
  • 8/14(金) オプションSQ算出日/米7月小売売上高/米8月ミシガン大学消費者マインド指数/決算=アシックス・荏原・SOMPO HD
  • 8/27(木)-29(土) ジャクソンホール会議/9/4(金)21:30 米雇用統計(8月分)/9/15(火)-16(水) FOMC/9/17(木)-18(金) 日銀金融政策決定会合

主要出典


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